3月1日(日)高校の卒業式が行なわれ250名の卒業生が学舎を巣立ちました。
平成20年度長崎南山高等学校第57回卒業証書授与式式辞
「出会いに学び、自分を磨け」
2009年3月1日
学校長 松本 勝男
本日ここに、山(やま)?(さき)陽(あきら)育友会会長様、吉原昭信同窓会会長様をはじめ、多数のご来賓のご臨席を賜り、第57回卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな喜びであり、心から感謝申し上げます。
57回目を数える今年度の卒業式、250名の卒業生がこの学び舎を巣立っていきます。卒業生の皆さん、保護者の皆様、ご卒業おめでとうございます。中学校も併設されている南山での3年ないし6年の学校生活、たくさんの思い出を抱えながら、本日の卒業式を迎えられたことと思います。
男子校であることもさることながら、遠方からバスや電車で学校に通ってくる仲間、寮生や神学生そして下宿生のように親元を離れて学校に通ってくる仲間もいましたから、他の学校では味わうことができない様々な出会いがあったことでしょう。67億を超える人間がこの地球で生活していることを考えると、人と人とが出会うということは実に奇跡的なことなのだと思わずにはいられません。
私たちは一つ一つの出会いを通していろいろなことを学び、それを人生の糧にしていくことができます。中には思い出したくもないような苦々しい出会いもあるかもしれません。しかし、そんな出会いも、長い人生の営みの中では必ず何らかの役割を果たしているはずです。しばらく時間が経って、いろいろな体験を積み重ねていくうちに、ある時にふと、「あの時の苦々しい出会いにも意味があったのだ」ということに気づかされるものではないでしょうか。
保護者の皆様におかれましても、本日の卒業の日までのご子息をめぐる様々な出来事を思い起こされていることと思います。私自身もそうでしたが、中学・高校時代は甘えの裏返しとして、親や先生に対して、反抗的な態度をとってしまうことがあるものです。何か面白くないことがあって、親兄弟に八つ当たりしてしまうこともあるでしょう。そんなとき、きっと皆様は、戸惑いの中にも、親として、人生の先輩として、時には厳しく時には優しく、忍耐強くご子息と向き合われ、家族の絆を一層強いものにしてこられたことと思います。喜怒哀楽の思い出がいっぱいの18年間の歳月を経て、本日、ご子息の卒業の日を迎えられた皆様の喜びはどれだけ大きいことでしょうか。
卒業生の皆さんは、初めて空を飛ぶ小鳥のようなものかもしれません。詩人の原田直友さんは『はじめて小鳥が飛んだとき』という詩を書かれていますが、そこには初めて空を飛ぶ小鳥の期待と不安、それを見守る親鳥や森の自然の優しさが美しく歌いこまれています。
『はじめて小鳥が飛んだとき』 原田直友
はじめて小鳥が飛んだとき
森はしいんとしずまった
木々の小枝が手をさしのべた
うれしさと不安で小鳥の小さなむねは
どきんどきんと大きく鳴っていた
「心配しないで」と かあさん鳥が
やさしくかたをだいてやった
「さあ おとび」と とうさん鳥が
ぽんと一つかたをたたいた
はじめて小鳥がじょうずに飛んだとき
森は はく手かっさいした
本日ここに集う私たちは誰もが皆、それぞれの人生の中で「はじめて空を飛ぶ小鳥」の気持ちを体験することができるし、その小鳥を見守る「かあさん鳥」や「とうさん鳥」、そして「森」の気持ちを体験することもできます。卒業生の皆さんが「はじめて空を飛ぶ小鳥」であれば、保護者の皆様は「かあさん鳥」や「とうさん鳥」、そして、ご来賓の皆様や私共教職員、そして在校生の皆さんは、南山の学び舎を巣立っていく卒業生を見守る「森」であります。ここに集う私たちは、どのような思いで、本日の晴れの卒業式を迎えているのでしょうか。
原田さんのこの詩を読まれたあるお母さんの思いは複雑です。自分の子どもが「大人になって空を飛ぼうとしはじめたとき」に、果たして「かあさん鳥」や「とうさん鳥」のようなカッコいいお母さんでいられるのだろうか、という不安を拭い切れないのです。しかし、このお母さんは、せめて、「誰かが空をじょうずに飛べたとき」は、「森」のように心から「はく手かっさい」できる人になりたいと願っておられます。
卒業生の皆さん、皆さんはこれから厳しい社会の荒波をわたっていくことになりますが、そんな中にも、「はく手かっさい」して皆さんを応援してくれる人たちに必ず出会うことができます。そんな人たちを喜ばすことができるように、自分の務めをしっかりと果たして、「じょうずに空を飛べる鳥」のようになってください。そして、いつかきっと、「はじめて空を飛ぶ小鳥」をしっかりと支える「とうさん鳥」のように、また「拍手かっさい」を惜しまない「森」としても大きく成長してください。皆さんならきっとできます。
南山も来年度は創立58年目を迎えます。卒業生の皆さんのがんばりに負けないように、皆さんが胸を張って自慢できる母校であり続けるように、努力を積み重ねていくことを約束いたします。
最後になりましたが、この場を借りまして、南山の教育活動に対し皆様からいただいたご理解とご協力に、衷心より感謝申し上げます。特に校長1年生として過ごしたこの1年間は、教職員、生徒、保護者の皆様をはじめ、南山に関わるたくさんの方々からがっちりと支えられてきたことを実感できて、私は本当に幸せでした。私も新米校長として「じょうずに空を飛べる鳥」になれるように、これからも努力を積み重ねていきたいと思います。
どうぞ、本日ここにお集まりの皆様一人一人の上に神様からの祝福が豊かに注がれますように。皆様のご多幸をお祈りし、学校長の式辞とさせていただきます。